アビトラ、FRデルタニュートラル、LP。どれも「どこでやるか」で結果がほぼ決まります。ところが利回りの高い場所は、人が入れば利回りが落ちる。つまり「今アツいプールはここ」という記事は、公開された時点から腐り始めます。
なのでこの記事では個別の餌場を挙げません。代わりに自分で探すための手順を書きます。手順は腐らないので、これを覚えれば毎月自分で探せます。
大原則:高い数字を見つけるのは簡単
スクリーニングでいちばん大事なことを先に書きます。
高い数字を見つけるのは誰でもできる。その数字が続くかどうかを見るのがスクリーニング。
年率600%と表示されているプールも、FRが0.5%の銘柄も、探せばいくらでもあります。問題はそれが来週も同じ数字かどうか。ここを見ないと、入った瞬間に利回りが半分になっている、という展開になります。
以下の手順は全部この一点に向かっています。
LPの餌場:DefiLlama で表示APYを剥がす
DefiLlama の Yields は、現在101チェーン・496プロトコル・15,000以上のプールを横断で比較できます。ここを一次スクリーニングに使います。
1. APY を Reward と Intrinsic に分解する
DefiLlama は表示APYを内訳で出せます。ここが最重要です。
- Intrinsic — 手数料など、そのプールが本来生んでいる利回り
- Reward — インセンティブとして配られるトークン由来の上乗せ
表示APYが高いプールの多くは、Reward が大部分を占めています。インセンティブは配布が終われば消えますし、配られるトークンの価格が下がれば実際の受取額も下がります。Intrinsic が薄いのに表示APYだけ高いプールは、餌場ではなく罠に近い。
まず Reward を剥がして、Intrinsic だけで比較してください。それだけで候補は劇的に減ります。
2. 30d Stability を見る
DefiLlama には 30d Stability という列があり、「Stable 98」「Mixed 53」のように表示されます。過去30日でその利回りがどれだけブレたかの指標です。
スコアが低い(Mixed 側の)プールは、たまたま今日だけ高い可能性があります。今日のAPYではなく、30日間そのAPYだったかどうかを見る。表示を Now から 30d に切り替えるのも同じ目的です。
3. TVL と出来高の関係を見る
LPの手数料収入は「出来高 ÷ TVL」でほぼ決まります。預けられている資金が少なくて取引が多いプールほど、自分の資金あたりの取り分が大きくなる。
逆に、TVLが巨大なのにAPYが高いプールは、ほぼ間違いなくインセンティブで持ち上げられています(=1に戻る)。
4. .csv で落とす
DefiLlama は絞り込んだ結果を .csv でエクスポートできます。ここから先の引き算(ガス代、IL、出入りの手数料)は自分で計算する必要があるので、表計算に持っていくのが早いです。
FRデルタニュートラルの餌場:Coinglass
Coinglass の Funding Rate は、主要取引所のファンディングレートを銘柄×取引所の表で並べてくれます。Funding Rate Arbitrage という専用タブもあります。
Current ではなく 30 Day / 1 Year を見る
ここでも原則は同じです。Current(今この瞬間)のランキングは、たまたま今高いだけの銘柄が上位に来ます。30 Day や 1 Year、Accumulated Funding Rate を見て、継続的にプラスだった銘柄を拾ってください。
実際の数字を見てみる
2026年9月7日時点のスナップショットです。ファンディングは8時間ごと付与として年率換算しています(付与間隔は銘柄・取引所で異なるので要確認)。
| 銘柄 | FR(8h) | 年率換算 | $1000での受取 |
|---|---|---|---|
| BTC(Binance) | 0.0041% | 約4.5% | 年 約$45/月 約$3.7 |
| GIGGLEMAX(Gate) | 0.5600% | 約613% | 年 約$6,130 |
この2行に、この手法の本質が全部出ています。
大型銘柄は安全だが小さい。BTCで年4.5%なら、$1000で月$3.7です。往復の取引手数料と送金手数料を引いたら、最初の数ヶ月は回収に消えます。
高FR銘柄は数字が桁違いだが、そのままでは組めない。この日の高FRランキングは上位が Gate の無名トークンで占められていました。デルタニュートラルは「現物ロング+パーペチュアルショート」で成立するので、ヘッジできる現物が無ければそもそも組めません。仮に現物があっても板が薄ければ、入るときと出るときのスリッページでFRの取り分が消えます。しかもこの水準のFRは数日で反転します。
だから見るべきは「FRが高い銘柄」ではなく、「そこそこのFRが長期間続いていて、かつ現物の板が厚い銘柄」です。ランキングの1位は基本的に罠だと思ってください。
アビトラの餌場:スプレッドより送金速度
取引所間の価格差は、主要銘柄なら通常0.1%未満です。往復の取引手数料でほぼ消えます。
そして致命的なのが送金時間です。安い取引所で買って高い取引所で売る、という素朴な形だと、送金している数分〜数十分の間に価格差が消えます。実際に成立させるには両方の取引所にあらかじめ資金を置いておく必要があり、資金が二重に拘束されます。$1000なら実質$500ずつです。
狙うなら、価格差そのものより「歪みが出やすい局面」を探すことになります。新規上場の直後、極端な相場変動の直後など。ただしそういう局面ほど板が薄く、約定しない・スリッページで消えるリスクが上がります。
最後に必ずやる引き算
3手法とも、候補が絞れたら同じ式に通します。表示APRのままでは絶対に判断しないでください。
実効APR =(手数料収入 + インセンティブ + FR受取 − IL − ガス代 − 取引手数料)÷ 投下資金 × 年率換算
LPならILとレンジ調整のガス代、FRデルニューなら現物とパープ両方の手数料、アビトラなら往復手数料と送金手数料。これを引いた後の数字だけが、実際に手元に残る利回りです。
少額でやる場合の壁
$1000以下で回すとき、利回り率よりも絶対額が効いてきます。年率10%でも$1000なら年$100、月$8です。一方でガス代や送金手数料は資金量に関係なく固定でかかるので、小さい資金ほど手数料の比率が跳ね上がります。
なので少額で見るべき指標は「APRが何%か」ではなく、「固定費を引いた後に残るか」です。月$8の収入に対して往復$5の手数料がかかるなら、それは成立していません。
手順まとめ
- 一次スクリーニング — DefiLlama(LP)/ Coinglass(FR)で候補を出す
- 継続性チェック — 30d Stability、30 Day / 1 Year の累積。今日だけの数字を捨てる
- 見かけを剥がす — Reward を除いた Intrinsic、現物の板の厚さ
- 引き算 — 実効APRの式に通す
- 小さく入れて実測 — 計算が合っていたか確かめる。ここが人柱の本番
1〜4は机上でできます。資金を動かさずにここまで進めて、通ったものだけ5に進むのが、少額でやるときの正しい順番です。
このサイトでは今後、実際に5まで進めた結果を数字で載せていきます。計算通りにいかなかったものも含めて。
本記事の数値は2026年9月7日時点で各サイトを確認したスナップショットです。ファンディングの付与間隔や手数料は銘柄・取引所ごとに異なるため、必ずご自身で最新をご確認ください。本サイトは投資助言をおこなうものではありません。デリバティブ取引には清算リスクが、LPにはインパーマネントロスのリスクがあります。

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