前回、餌場スクリーニングの手順を書きました。手順を書いておいて自分で回さないのは格好がつかないので、実際に回しました。
資金は1円も動かしていません。机上でどこまで分かって、どこから先が分からないのかを確かめるのが目的です。結果として、自分が書いた手順に穴が見つかりました。そこも含めて全部出します。
データは2026年9月7日時点、DefiLlama の公開APIから取得したものです。
母数は 17,257 プール
この日の時点で、DefiLlama が追跡していたプールは 17,257件ありました。ここから絞っていきます。
第1段:TVLで足切り(→ 2,728件)
TVL(そのプールに預けられている総額)が100万ドル未満のものを落としました。残り 2,728件。
小さすぎるプールは、自分が入っただけで利回りが動きますし、出るときに抜けられません。少額でやるなら安全側に倒しておくべきところです。
第2段:表示APYを分解する
ここが前回いちばん強調した部分です。実際に表示APYが高い順に並べたら、想像以上でした。
| プール | チェーン | 表示APY | 実質(Base) | インセンティブ(Reward) |
|---|---|---|---|---|
| USDC-VELVET(aerodrome) | Base | 130,884% | 1.6% | 130,882% |
| WETH-CBBTC(aerodrome) | Base | 2,938% | 76.1% | 2,862% |
| ZBU(zeebu) | BSC | 1,107% | 0.0% | 1,107% |
| WETH-USDC(aerodrome) | Base | 273% | 93.8% | 179% |
1行目を見てください。表示APY 130,884% のうち、そのプールが実際に稼いでいるのは 1.6% だけです。残りは全部インセンティブトークンの配布。配布が終われば1.6%に戻りますし、配られるトークンの価格が下がれば受取額もそのまま下がります。
3行目の ZBU に至っては実質 0.0% です。手数料をまったく生んでいないプールに、年率1,107%相当のトークンが配られている状態。
この段階で、インセンティブが表示APYの50%以上を占めるものを落としました。残り 1,207件。
第3段:ここで手順の穴に気づいた
前回の記事では「Reward を剥がして Intrinsic だけで比較しろ」と書きました。これだけでは足りませんでした。
インセンティブ比率で絞ったあとのリストに、こういうものが残っていたからです。
| プール | チェーン | 表示APY | 実質(Base) | インセンティブ |
|---|---|---|---|---|
| ZEC-ZCAT(raydium) | Solana | 4,207% | 4,207% | 0% |
| SOL-STONK(orca) | Solana | 4,104% | 4,104% | 0% |
| WETH-STONKEX(uniswap v3) | Base | 2,162% | 2,162% | 0% |
インセンティブ比率0%。つまり全部が「実質の手数料収入」です。前回の基準ではこれが最優良候補として残ってしまいます。
でも年率4,207%の手数料収入が続くわけがありません。これは薄いプールに一時的な出来高が集中しただけです。銘柄名を見れば分かる通り、いずれもミーム系のペアで、しかも全部 IL(インパーマネントロス)ありの組み合わせです。
インセンティブが0%でも罠はある。実質APYもまた、一過性の出来高で跳ね上がる。
前回の手順は、ここを「30d Stability を見る」の1行で済ませていました。実際に回してみると、この工程は Reward の分解と同じかそれ以上に重要です。順番としても、分解より先に「その数字は何日続いているか」を見たほうが早く絞れます。手順を修正します。
第4段:チェーンで絞る(→ 643件)
少額でやる場合、Ethereum メインネットは選択肢から外れます。ポジションの出し入れやレンジ調整のたびにガス代がかかり、$1000規模だと利益を食い尽くすからです。
Ethereum 以外に限定して、残り 643件。ここまでが机上の一次スクリーニングです。
残った候補を1000ドルで皮算用してみる
条件(TVL $1M以上・IL無し・インセンティブ比率50%未満・非Ethereum)を通過したもののうち、実質APYが高い順に並べるとこうなりました。
| プール | チェーン | 実質APY | TVL | 30日間のAPY変化 |
|---|---|---|---|---|
| USDCHF-USDC(gmtrade) | Solana | 78.6% | $1.6M | +9.6 |
| USDCAD-USDC(gmtrade) | Solana | 39.0% | $2.4M | +5.2 |
| USDC(harvest-finance) | Base | 20.3% | $1.8M | +9.8 |
| USDC(neutral-trade) | Solana | 18.9% | $2.3M | −28.2 |
最後の行に注目してください。実質18.9%と悪くない数字ですが、30日間でAPYが28ポイント下がっています。つまり1ヶ月前は47%近くあったものが、今は18.9%まで落ちてきている最中です。今の数字だけ見て入ると、来月にはさらに下がっている可能性が高い。
逆に上の3つは30日間でプラス方向に動いています。少なくとも急落中ではありません。
仮に一番上(実質78.6%)に $1000(15万円換算)を30日入れたとすると、単純計算で約9,700円。Solana なのでガス代はほぼ無視できる水準です。
前の記事で計算した、BTCのファンディングレートで同額を回した場合の月約550円と比べると、桁が違います。
机上で分かるのはここまで
ここから先は計算では出ません。
- 78.6%が来月も続くのか。このプールの収益源は為替ペアの取引相手方になることなので、相場次第で普通にマイナスに振れます
- 実際に入って出るときのコスト。スリッページと往復の手数料は、入ってみないと正確には分かりません
- そのプロトコル自体が安全か。DefiLlama は自サイトに「監査も推奨もしていない、データを提供しているだけ」と明記しています。リスト入りは安全性の保証ではありません
なので次は小さく入れて実測します。いきなり$1000は入れません。まず最小額で入れて出して、往復コストを測るところからです。その結果はまた記録として出します。
修正した手順
今回回してみて、前回の手順を並べ替えました。
- TVLで足切り — 小さすぎるプールを最初に落とす
- 継続性を先に見る — 30日間の変化とStability。ここを2番目に上げました
- 表示APYを分解 — Reward を剥がして実質だけで比較
- チェーンで絞る — 少額ならガス代の安いチェーン
- 引き算 — 実効APRの式に通す
- 最小額で実測 — 往復コストを測る。ここからが本番
1〜5は資金ゼロでできます。今回かかったのは、APIを叩いて絞り込むだけの作業でした。
本記事の数値は2026年9月7日時点で DefiLlama の公開APIから取得したスナップショットです。利回りは常時変動するため、同じ条件で回しても同じ結果にはなりません。掲載したプール名は「この日のスクリーニングで残ったもの」であり、推奨ではありません。本サイトは投資助言をおこなうものではありません。DeFiには元本を失うリスク、スマートコントラクトのリスク、インパーマネントロスのリスクがあります。


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